昨日から昨日から あったのだ たしかに あなたのようなわたしと わたしのようなあなたが にてもにつかぬあなたと にてもにつかぬわたしが ころがされ ふきとばされ はねとばされたわたしが すべりおちたあなたと かおをあからめ 理解しあうひととき のせられたわたしと かぶせられたわたしが のこのこと逃げていったので 誰かの手の中はからっぽ わたしは別の誰かと握手する こわされて溶けていった わたしのあたまと舌が 盗まれた昔と今が あなたはこっち わたしはむこうと 別れていく ここにいるはずのわたしと ここにいるべきでないあなたと 手の中でまじりあわない ここにいないわたしと ここにいるべきあなたと すれちがうわけもない たしかにあった昨日からの間違い わたしでもなくあなたでもない 他の誰かの間違い 初出「詩学」1997 4月 |